「行こうよ! 吹奏楽部!」
「ああ!」
 果たして、皆が僕を受け入れてくれるのかは分からない。
 それでも、真由がいれば吹奏楽を諦めずに続けていける。
 そう思えた。

        ♪
 
 やっと、平野さんに会う決心が着いた。
 それなのに、病院に平野さんの姿はなかった。
 看護師の話では、とっくに退院していて、今は家にいるそうだ。
 その事を聞いて、とても安心した。
 しかし、退院したというのに、どうして彼女は学校に来ないのだろう。
 ただ、僕が彼女を見掛けなかっただけなのか。
 それとも……。
 妙な胸騒ぎがしていた。

 三月も終わりだというのに、病院からの帰り道はとても寒かった。
 結局、平野さんには会う事が出来なかった。
 もしかしたら、これからも会う事は出来なのかも。
 そんな下向きな考えしか出来ないでいた。
 その時だ。
 どこからか、聴き覚えのある音色が聞こえて来る。
 夕日が空を真赤に染めた、夕暮れ時の音楽室。
 そこで彼女が奏でいたピアノの音。
 聴こえて来る曲名は、すぐに分かった。
 いや、分からない筈がない。
 これはホープだ。
 いったい誰が?
 考えるまでもない。
 これを弾いているのは平野さんだ。
 彼女以外にありえない。

 ひたすら音を辿って着いた場所は、郊外に位置する一軒家だった。
 小さな門の脇には、ピアノ教室と書かれた看板が立て掛けられている。
 もしかしたら、平野さんはここに通っているのかもしれない。
 ほんの少しの期待を抱き、インターホンを押した。
 すると、ホープの音色は突然止まった。
『はい』
 スピーカーから老婆の声が聞こえて来る。