教室のドアから、宮久保が呼んでいた。
 立ち上がり、教室から出る。
「おお、宮久保」
「ねえ、テストどうだった?」
 今日は授業が潰れて、丸一日がテストになっている。
 あまり自信のない僕には、突然その話題を出されるのは少々きついかもしれない。
 なんたって、あと三つもテストが残っているのだから。
「まあまあ、かな」
 とりあえず、そう答える。
 それを聞いた宮久保は、ややからかい気味に言う。
「ふーん。じゃあ、そんなに良くはなかったんだね」
「えっと、まあ、僕は赤点さえ取らなければ、それで良いから」
 と、胸を張って言ってみた。
「あー、そんなんじゃあ、良い大学には入れないよ」
「良いんだよ。僕は付属の大学に行くんだから」
 気のせいだろうか。
 少しだけ彼女の表情が暗くなる。
「そっか。私は、出来れば他大に行きたいなあ、なんて思ってるんだけどね」
「え!? 凄いな」
 ふふん、と宮久保も胸を張って見せた。


 答案は、三日と経たずに返却された。
 テストは全部で五教科ある。
 先に返却された四教科は、赤点にはなっていなかった物の、平均点超えもしていなかった。
 そして、最後の一教科が返された。
「うわ……」
 それは、真赤なバッテンだらけの答案用紙。
 まさしく赤点だ。
 教師は容赦なく言う。
「赤点だった奴は追試だからな」


「へー、大変だね」
 帰り道、宮久保にテストの事を話すと、そんな返答をされた。
「ちゃんと勉強したのになあ……」
「うーん、勉強の仕方なんて、人それぞれだから」
「そういえば、宮久保はテストどうだったんだ?」
「私? 私は全部平均点超えだよ」
「う……そっか」