「そうよ。どうして?」
「だって、部活中とか……見た事ないし」
「ああ、それは……」
 先輩は、私から少しだけ目を反らす。
「……最近、私が部活に出てないからじゃないかなぁ……」
「どうして?」
「なんか、部活に出るのが面倒でさぁ。まあ、正直に言うと……だるい」
 私と同じだ。
 だるい。
 それだけの理由で、物事を済ませている。
「もしかして、君もサボり」
「……はい。そんなところです」
「じゃあさ」
 琴峰先輩は私の手を取る。
「二人でどこかに遊びに行こうよ」
「え? どこかって?」
「うーん……とりあえず、その濡れた服をどうにかしないとね。風邪引いちゃうから。私の家にでも来る? すぐ近くだから」
「……はい」
 こんな先輩に出会ったのは初めてだ。
 なんだか、一緒にいると安心した。

 服を貸してくれるという行為に甘えて、彼女の家に上がらせて貰った。
「ここが私の部屋」
 部屋に入るなり、琴峰先輩は一枚のタオルを私に掛け、洋服ダンスをあさり始めた。
「うーんと……これなんて、どうかな?」
 そう言って、上下ジャージと下着を引っぱり出す。
「悪いね。小さい服なくて」
「いえ、大丈夫です」
 ブラウスのボタンを外し、スカートを脱ごうしたが、彼女の視線が真っ直ぐに私を捉えている事に気付いた。
「あの……先輩……」
「ん? どうした?」
「いや……何て言うか……その……」
 琴峰先輩は察してくれたのか、私に背中を向ける。
「まあ、そうね。いくら同姓とは言っても、さすがに下着までは着替えにくいよね」
「すいません」
「いやいや、いいって」

 着替えを終えた私を見て、琴峰先輩はからかい気味に微笑む。