いるに違いない。
 しかし、私は気取る様な事はしていない。
 ただ、普通にバスケをしている。
 それだけなのに……なんて、理不尽なのだろう。


 翌日、一限から授業をサボった。
 理由はただ一つ。
 ダルいから。
 それは、全国の高校生が授業をサボる時に使う理由ナンバーワンに違いない。
 そして、この学校でサボれる場所といったら、ここが一番だ。
 校舎裏。
 木蓮が生い茂っている割には、気持ち悪い虫もいない。
 更に上からの木漏れ日が、なんとも綺麗で気持ちが良さそうだ。
 ふと、木蓮の下に誰かがいる事に気付いた。
 私は反射的に後ろへ下がり、物陰に隠れる。
 良かった。
 向こうは気付いていない。
 木蓮の下にいるのは、一人の少年だった。
 私と同じく授業をサボっているのだろう。
 ジーっと見ていると、彼が泣いている事に気付いた。
 そういえば、クラスの友達から聞いた事があった。
 入学して早々、両親を亡くした可哀想な男の子が、校舎の裏で一人で泣いているという噂を……。
「本当だったんだ」
 ただの噂だと思っていた。
 もしかしたら、彼と哀しみを分かち合う事が出来たら……。
 駄目だ。
 私なんかじゃ、彼には近付けない。
 それに、私に関わった事で、彼にまで何かしらのリスクを背負うのなら、このままで良い。


 放課後になると、皆が急いで部活へ行く準備をしている。
 勿論、私もそうだ。
 女子バスケ部の部室へ行くと、まだ誰もいなかった。
 自分専用のロッカーを開けた。
 すると突然、幾本の画鋲が私の頭に落下した。
 その直後、部室のドアが開き、高笑いが私に浴びせられる。
 声の主は、女子バスケ部の私を覗いた一年全員だった。
「マジ! ウけるんだけど!」
 一人がそう言い放ち、持っていたバケツの水を浴びせる。
 笑いは更に大きくなった。