彼女は儚げな表情を浮かべていた。
「そういえば、お前の名字は平野のままなんだな」
「うん。私の名字を宮久保に戻したら、きっと……私は隼人君の事を忘れてしまうから」
この数年間に渡る出来事は、俺達の心に深い傷を負わせた。
それだけでなく、当事者の親類には死亡者もいる程だ。
光圀幸太の両親の遺体は、警察の家宅捜索の結果、二階の部屋の天井に隠されている事が分かったそうだ。
それと同時に、沙耶子を盗撮した写真や、繁華街で手に入れたと思わしき覚醒剤も警察に見つかり、光圀の罪が一気に明かされた。
これが事の顛末だ。
実を言うと、俺にも非はある。
俺や沙耶子が隼人と出会う前、その頃から光圀は沙耶子に接触していたのだ。
もしかしたら、俺がその事を察して行動を起こしていれば、隼人があんな事をする前に、この件は終わっていたのかもしれない。
それに、もしかしたら俺の思いも伝えられたかもしれないのに。
隼人にも、誰にも話す事はなかった彼女への想い。
「じゃあ、私はもう帰るね」
沙耶子は立ち上がり、去って行く。
「待ってくれ」
俺は意を決して沙耶子を呼び止めた。
彼女はこちらを振り向く。
「沙耶子、今まで、すっと言えなかったけど、俺はお前の事が好きだった」
俺はポケットに入っているリストバンドを、沙耶子に差し出した。
そして、もう一つ。
それは今、彼女の腕に着いている。
俺はリストバンドを墓石の上に置いた。
「お前の事が好き、そう言いたくて、この数年間を過ごして来た」
沙耶子は申し訳なさそうな顔を見せる。
「綾人君……私は、まだ隼人君の事が……」
「いいんだ。もう、いいんだ。俺はただ、この言葉をお前に伝えたかっただけだから。それに……」
「?」
「それに、これでお前との関係を清算出来た。もう、俺とお前は赤の他人だ」
沙耶子は俺の服にしがみ付く。
「どうして!? どうして、そんな事を言うの!?」
「お前の為だよ。もう、お前は一人で生きていける筈だ」
「そういえば、お前の名字は平野のままなんだな」
「うん。私の名字を宮久保に戻したら、きっと……私は隼人君の事を忘れてしまうから」
この数年間に渡る出来事は、俺達の心に深い傷を負わせた。
それだけでなく、当事者の親類には死亡者もいる程だ。
光圀幸太の両親の遺体は、警察の家宅捜索の結果、二階の部屋の天井に隠されている事が分かったそうだ。
それと同時に、沙耶子を盗撮した写真や、繁華街で手に入れたと思わしき覚醒剤も警察に見つかり、光圀の罪が一気に明かされた。
これが事の顛末だ。
実を言うと、俺にも非はある。
俺や沙耶子が隼人と出会う前、その頃から光圀は沙耶子に接触していたのだ。
もしかしたら、俺がその事を察して行動を起こしていれば、隼人があんな事をする前に、この件は終わっていたのかもしれない。
それに、もしかしたら俺の思いも伝えられたかもしれないのに。
隼人にも、誰にも話す事はなかった彼女への想い。
「じゃあ、私はもう帰るね」
沙耶子は立ち上がり、去って行く。
「待ってくれ」
俺は意を決して沙耶子を呼び止めた。
彼女はこちらを振り向く。
「沙耶子、今まで、すっと言えなかったけど、俺はお前の事が好きだった」
俺はポケットに入っているリストバンドを、沙耶子に差し出した。
そして、もう一つ。
それは今、彼女の腕に着いている。
俺はリストバンドを墓石の上に置いた。
「お前の事が好き、そう言いたくて、この数年間を過ごして来た」
沙耶子は申し訳なさそうな顔を見せる。
「綾人君……私は、まだ隼人君の事が……」
「いいんだ。もう、いいんだ。俺はただ、この言葉をお前に伝えたかっただけだから。それに……」
「?」
「それに、これでお前との関係を清算出来た。もう、俺とお前は赤の他人だ」
沙耶子は俺の服にしがみ付く。
「どうして!? どうして、そんな事を言うの!?」
「お前の為だよ。もう、お前は一人で生きていける筈だ」

