「思い知らせてやる。人の痛みをなあ‼」
 そう叫んで、最後の力を振り絞り、光圀を押し倒して首を締め上げた。
「うっく、苦しい」
 もう、容赦はしない。
 僕がここで全てを終わらせてみせる。


 光圀は、やがて動かなくなった。
 そして僕の意識も遠くなり、彼の隣に倒れた。
 視界が白くなり、頭がぼんやりとして来る。
 沙耶子に会いたい。
 せめて、死ぬ前には沙耶子と笑っていたかった。
「沙耶子……君が見えないよ」
 霞む視界の中で、部屋に置いてあるピアノだけが見えた。
 出来る事なら、あの夏に戻りたい。
 沙耶子と二人で過ごした、あの夏に……。