「宮久保。耳を貸して」
彼女の耳に、今までの経験を活かした知識を吹き込む。
すると、宮久保は僕から目を反らし、恥ずかしそうに頬を真赤に染めた。
「ひ、平野君」
「何?」
「ごめん」
「いや、どうって事ないよ……」
少しだけ、気まずい空気を作ってしまった。
どうにかして、この……何て言うか……エロい話から離れないと。
「そういえば、宮久保って家はどの辺?」
「この先の駅から電車だよ」
「電車か。毎日、大変だろ?」
「そうでもないよ。それに、長い道を歩いてるから、色々と面白い発見があるんだよ」
「発見?」
「ほら! あれ」
そう言って、ある方向を指差す。
「あの木」
宮久保が指差した木は、太い木の棒で補強されていた。
「あれが、どうかしたのか?」
「この前までは、今にも倒れそうだったのに、支える事で立ち上がり始めてる。なんだか、あの木を見ると、やる気が出るっていうか……。これからも頑張って行けそう、みたいに思えるんだよね。はは、ごめんね。なんか自分で言ってて、ちょっと恥ずかしいかも……。他にも、この時間にこの場所を歩いて来る人の服装とか。……私って、ちょっと変かな?」
そんな事はない。
毎日、この道を通っているけれど、そんな事に関心を持った事など、一度もなかった。
宮久保は、なんて前向きなんだ。
つくづく感心してしまった。
宮久保と出会って、一週間程経っただろうか。
だいぶ僕に馴染んだ様な気がする。
休み時間になると、宮久保は僕に会いに教室へ来るようになっていた。
同じ学年で、クラスも近いからだろう。
「平野君」

