少しだけ内装が変わっているが、教室の位置やどこに何があるかは大
体把握している。
光圀は、かつて生徒会室に所属していた。
「となると、生徒会室か」


 生徒会室は、校舎とは別のプレハブに位置している。
 横開きのドアをノックすると、中から一人の少女が出て来た。
 普段着を着ている所を見ると、生徒会のOBか何かだろうか。
「君は……?」
「それはこっちの台詞。あなたは誰? 私服って所を見ると、生徒って訳ではなさそうだけど」
 その無愛想な発言に、少しだけ空気が重くなる。
「いや、君も私服だろ」
「私は生徒会のOBとして、ここに来たの。来週から文化祭なんでね。あなたは?」
「僕も卒業生。ちょっと、光圀幸太っていう人について知りたい事があって来たんだ。生徒会に行けば何か分かると思ったんだけど……」
「光圀……先輩」
 彼女の表情に影が差す。
「知ってるのか?」
「一応……。あ、立ち話もなんだし、とりあえず中へ」
 室内へ招かれ、二人で向かい会い椅子に座った。
 彼女は重い口をゆっくりと開く。
「光圀先輩は、とても真面目な人だったの。成績だって上位者だったし、私がどんなミスをしても、笑って受け流してくれたわ」
 確かに。
 あの日の朝、沙耶子の生存を逸早く教えてくれた光圀幸太には、とても感謝している。
 僕から見ても、あの人はとても優しくて穏やかそうな人だった。
「でも……」
 彼女の声が段々低くなっていく。
「光圀先輩は、あの日から学校に来なくなった。あの日の事はよく覚えているわ。印象的だったの。前日に学校の屋上で自殺未遂をした子がいたから……」
 心なしか、その話をされると心が痛む。
「沙耶子……」
 無意識のうちに、その名を呟いていた。
「え?」
「いや、何でもない。続けて」
「いつも通りの休み時間、生徒会室に行ったの。でも、いつも一番乗りの筈の光圀先輩はいなかった。いつまで経っても来ないから、皆で校内を探したの」