「大変なんだ!」
彼の声は、珍しく活き活きとしている。
「沙耶子が目を覚ました!」
「え?」
その知らせは、僕の眠気を一気に覚まさせた。
病院内は早朝という事もあり、看護師が所々で忙しそうにバタバタとしていた。
彼の姿がない事を察するに、まだ来ていないらしい。
とりあえず、先に病室へ行く事にした。
正直、怖かった。
沙耶子と会うのは三年振り、という事になる。
僕は恐れを振り切り、病室のドアを開く。
部屋の中は、朝方の明るい光で満ちていた。
窓際に置かれたベットの上に、半身を起こして外を眺める沙耶子の姿がある。
「沙耶子……」
その名を呼んで、すぐ側へ行った。
沙耶子はこちらを振り向き、ゆっくりと口を動かした。
「……誰?」
「え?」
嫌な予感がした。
まさか、そんな筈はない。
彼女の事だ。
きっと、ただの冗談に違いない。
「沙耶子、僕だよ。隼人だよ……」
沙耶子は困った様な顔をしてしまう。
「あの……ごめんなさい」
一歩ずつ後ずさり、逃げる様にして病室から抜け出した。
せっかく、会えたのに。
「隼人、どうだった?」
廊下で綾人に会ったが、そのまま横切って病院の外へ出た。
沙耶子、綾人、僕、自分達の不幸を呪う様な気持だった。
もう、動く事も嫌だった。
病院の中庭のベンチで、ただ頭を抱えて蹲る。
何もしたくないし、何も考えたくなかった。
ベンチに座っている僕の直下に、野球ボールが一つ転がって来た。
手を伸ばし、それを拾い上げる。
彼の声は、珍しく活き活きとしている。
「沙耶子が目を覚ました!」
「え?」
その知らせは、僕の眠気を一気に覚まさせた。
病院内は早朝という事もあり、看護師が所々で忙しそうにバタバタとしていた。
彼の姿がない事を察するに、まだ来ていないらしい。
とりあえず、先に病室へ行く事にした。
正直、怖かった。
沙耶子と会うのは三年振り、という事になる。
僕は恐れを振り切り、病室のドアを開く。
部屋の中は、朝方の明るい光で満ちていた。
窓際に置かれたベットの上に、半身を起こして外を眺める沙耶子の姿がある。
「沙耶子……」
その名を呼んで、すぐ側へ行った。
沙耶子はこちらを振り向き、ゆっくりと口を動かした。
「……誰?」
「え?」
嫌な予感がした。
まさか、そんな筈はない。
彼女の事だ。
きっと、ただの冗談に違いない。
「沙耶子、僕だよ。隼人だよ……」
沙耶子は困った様な顔をしてしまう。
「あの……ごめんなさい」
一歩ずつ後ずさり、逃げる様にして病室から抜け出した。
せっかく、会えたのに。
「隼人、どうだった?」
廊下で綾人に会ったが、そのまま横切って病院の外へ出た。
沙耶子、綾人、僕、自分達の不幸を呪う様な気持だった。
もう、動く事も嫌だった。
病院の中庭のベンチで、ただ頭を抱えて蹲る。
何もしたくないし、何も考えたくなかった。
ベンチに座っている僕の直下に、野球ボールが一つ転がって来た。
手を伸ばし、それを拾い上げる。

