もしかして……。
「なあ、それ僕のじゃないか?」
「ああ、そうだよ」
 彼女は淡々と答えた。
 あまり面倒な事にはしたくないな。
 なるべく丁重に返して貰おう。
「なあ、返してくれないかな?」
「ちょっと待ってくれ」
「いや、そう言われても……そもそも、僕の携帯で何をしてるんだ?」
「ちょっとな」
 暫くの沈黙が続いて、彼女は僕に携帯を差し出した。
 僕は彼女の行動に疑問を抱きながらも、携帯を受け取る。
「メルアドを入れておいた」
「は?」
「だから、メールアドレス。ああ、大丈夫。電話帳とメールボックスは見てないから」
 そういう問題じゃない。
 僕にとって、自分に関わろうとする存在その物がイレギュラーなのだ。
「どういうつもりだよ?」
 彼女は少しだけ難しい顔をする。
「君に興味を持ったんだ」
「興味? 僕なんかに興味を持ったら、会く影響しかないぞ」
「ああ、そうかもな。例えば」
 彼女は短いスカートのポケットから、何かを取り出した。
 それは煙草の箱だった。
「おい、もしかして、それ僕の……」
「ああ、そうだ」
「返せ!」
 立ち上がって彼女から煙草を取り上げようとしたが、彼女はそれをポケットの中にしまってしまう。
「なんなんだよ!?」
 つい彼女に怒鳴ってしまった。
 しかし、彼女は動じる事はない。
「こんな所で煙草なんか吸ってるから、取り上げてやったんだろ」
「吸うも吸わないも、僕の勝手だろ!」
「私が嫌なんだ。知ってるか? 副流煙は主流煙よりも毒性が強いんだぞ」
「知らねえよ! 第一、僕は誰にも迷惑を掛けない様に、ここで吸ってるんじゃないか!」
 僕が意見に対して、彼女の意見も止まらない。
「そもそも、どうして煙草を吸っているんだ? 格好良いからか?」