僕は沙耶子に依存していたのだという事に。


一本の煙草を口に銜え、火を点ける。
副流煙は空に向かって、ゆっくりと登って行った。
今は昼休みでもなければ、放課後でもない。
皆が授業を受けている時間だ。
そんな時間に、この屋上で煙草を吸っている自分は、おそらく傍から見れば不良と思われても仕方がないだろう。
しかし、それでも良かった。
こういう行動を取っていれば、他人が寄って来る事がないからだ。
今年のクラスは、やけに積極的に僕に関わろうとする奴が多かった。
まあ、今となってはおそらく全員が僕と関わる事なんて諦めているのだろうけど。
何しろ、今は高校三年生の秋。
クラスメイトの大半は大学へ進学する。
 それ以外の者は就職活動に勤しんでいる。
 そんな奴等が、こんな僕と今更友情を深めようとなんてしないだろう。
 もう、嫌という程思い知った。
 他人と関わるとどうなるか。


 気が付けば、吸い掛けの煙草は、もう半分もなかった。
 その場に煙草を捨てて、軽く溜息を吐く。
 今から授業に行ってもしょうがない。
 昼休みになるまで、ここにいよう。
 あの日、沙耶子はここから落ちたのだろう。
 沙耶子の事を思い返す事のない場所を探して、ここまで来たのだが、結局は彼女の事を思い出してしまった。
 金網に背を預けて、緩やかな秋の風を受けながら目を瞑った。


 真昼の眩しい光で目を覚ました。
 太陽は丁度、僕の真上に位置している。
「おはよう!」
 隣から、少女の声がした。
「え?」
 振り向くと、僕のすぐ隣で一人の少女が片手で携帯をいじっていた。
 その携帯を見て、僕は自分のポケットを確認した。
 ポケットに携帯がない。