演奏が終わった頃には、いつの間にか暑さも忘れていた。
「いつ聴いても良いな」
「ありがとう」
「沙耶子は、将来はやっぱりピアニストか?」
私はクスクスと笑いながら答える。
「なれる物ならね」
「なれるよ」
「え?」
「その曲と沙耶子の腕があれば」
曲の事はともかく、自分の事を言われると少しだけ照れてしまう。
「うん。目指してみようかな……ピアニスト」
ふと、部屋の隅に置いてある本棚に目が付いた。
そこには数冊の本やアルバムが入っている様だ。
私は四つ折りにした楽譜を、その本棚の中の、本の間に差し込んだ。
「沙耶子?」
「もしかしたら、これから先、この楽譜を見て、演奏してくれる人がいるかもしれないから……」
「ああ、そうかもしれないな。これから入って来る新入生が、この楽譜を見て演奏するのかもしれないな」
私は誓った。
たくさんの人に私の音楽を聞いてもらう。
そして、いつか……。
「いつか、本当の母さんに、私が弾くホープを聴いてもらいたいな。そんな日、来るか分からないけど」
「来るさ。前にも言っただろ。希望を捨てるなって」
「うん! そうだね」
もしかしたら私の事なんて、あなたにとっては眼中にないのかもしれない。
それでも、もし夢を叶える事が出来て、たくさんの人が私のピアノを聴いてくれるようになったら、あなたは振り向いてくれますか?
母さん……。
「はーい!」
後ろで元気良く返事をする、女性の声がした。
「え?」
振り向くと一人の女性がいた。
まだ、二十代半ば程の容姿をしている。
「ちゃんと聴いてるわよ。あなたのピアノ」
「いつ聴いても良いな」
「ありがとう」
「沙耶子は、将来はやっぱりピアニストか?」
私はクスクスと笑いながら答える。
「なれる物ならね」
「なれるよ」
「え?」
「その曲と沙耶子の腕があれば」
曲の事はともかく、自分の事を言われると少しだけ照れてしまう。
「うん。目指してみようかな……ピアニスト」
ふと、部屋の隅に置いてある本棚に目が付いた。
そこには数冊の本やアルバムが入っている様だ。
私は四つ折りにした楽譜を、その本棚の中の、本の間に差し込んだ。
「沙耶子?」
「もしかしたら、これから先、この楽譜を見て、演奏してくれる人がいるかもしれないから……」
「ああ、そうかもしれないな。これから入って来る新入生が、この楽譜を見て演奏するのかもしれないな」
私は誓った。
たくさんの人に私の音楽を聞いてもらう。
そして、いつか……。
「いつか、本当の母さんに、私が弾くホープを聴いてもらいたいな。そんな日、来るか分からないけど」
「来るさ。前にも言っただろ。希望を捨てるなって」
「うん! そうだね」
もしかしたら私の事なんて、あなたにとっては眼中にないのかもしれない。
それでも、もし夢を叶える事が出来て、たくさんの人が私のピアノを聴いてくれるようになったら、あなたは振り向いてくれますか?
母さん……。
「はーい!」
後ろで元気良く返事をする、女性の声がした。
「え?」
振り向くと一人の女性がいた。
まだ、二十代半ば程の容姿をしている。
「ちゃんと聴いてるわよ。あなたのピアノ」

