先程までの活気が嘘の様だ。
 俺の起こした暴力の後に残った物、それは自身の中にだけある達成感だった。

 その後、二週間の自宅謹慎を余儀なくされた。
 あれだけ暴れれば当然だろう。
 しかし悔いはない。
きっと沙耶子に手を出す奴はもういないから。

 
日中の家の中は、叫びたくなるほど静かで、寂しかった。
 音のない家の中に俺は一人。
 静か過ぎて、気が狂ってしまいそうだった。

 昼間の街を、ただテキトウに歩く。
 街を巡回する警察やパトカーの影に怯え、結局は家に戻る。
 そんな事を繰り返して、謹慎期間を過ごした。

 謹慎の最終日の夜、俺の家に沙耶子が来た。
「学校で渡されたお手紙とか持って来たんだけど……」
「おう、入れよ」
 沙耶子を家に上げた。
 彼女が俺の家に入るのは、もう数カ月振りになる。
 あの頃を思い出すと、なんだか寂しくなった。

「これ、学校で貰ったお手紙。あと、蓮君が今日までの分のノートのコピーを作ってくれたの」
 数枚の手紙と、蓮がコピーしてくれたノート。
 まさか、あの勉強の苦手な蓮が、こんな事をするなんて。
「ありがとう。学校は、どうだ? 何かされたりしてないか?」
「私は大丈夫。でも、蓮君と美咲ちゃんが……」
「あいつらが、どうかしたのか?」

 俺が謹慎で野球部から抜けた為、夏大は初戦からボロ負けだったらしい。
 皆のモチベーションが下がっていた事もあるが、蓮は俺の不在が一番の敗因だと言ったそうだ。
 彼女の話によると、先日から蓮が美咲を拒絶する様になった。
 俺が暴力を起こした原因が美咲を含む、あの集団の女子グループだと判断した蓮は、彼女を憎む様になったのだそうだ。
 更に、夏大の初戦敗退。
 蓮にとって、それは本当に残念な事だったのだろう。

「美咲は、ただ利用されてただけだ」