それを見た周りの女子は一歩後ずさる。
 しかし、美咲だけは真っ直ぐに俺を見ていた。
 その光景を見ていた周りの男子が俺を取り押さえる。
 腕や足を掴む男子達を、俺は一気に振り払い、次に二人の女子の胸倉を掴み、壁に叩き付けた。
 もう、自分という人間が分からない。
 皆、死ねば良い。
 沙耶子や俺を苦しめる奴は、死ねば良いんだ。

 気付いた頃、周りには俺に殴られて伸びている数人の女子と男子。
 それと、ただ俺を茫然と立ちながら見つめる美咲の姿だけがあった。
 倒れている女子の一人の上に座り、顔面を殴り続ける。
「沙耶子を虐める為だけに、美咲を利用したんだろ!? そうなんだろ!?」
 力任せに殴り怒鳴る俺に、下で伸びている女子は掠れた声で泣き啜りながら言う。
「ごめんなさい……全部、私達が悪いんです。宮久保を虐める為に、美咲を利用して……。光圀先輩は何も関係ありません。私達が悪いんです」
 彼女の胸倉を掴み訊く。
「どうして、沙耶子を虐めた!?」
「だって……ムカついたから……。あんなに可愛くて……。でも、左手首には傷があって……。それを見ていたら、あんなに虐めがいのある子はいないと思って……」
 もう、まともに会話すら出来ない様だ。
 現に、俺が殴り続けている彼女の顔面は、血や痣で埋め尽くされている。
 彼女の眼球が虚ろに上を向く。
 俺は、殴り続けた女子を床に捨て、次は手身近で倒れている女子にまた同じ事をした。
 それを繰り返しているうちに、数人の教員が来る。
「烏丸! 何やってるんだ!?」
 一人が怒鳴り、俺を羽交い絞めにする。
「おい、放せよ! このセンコーがよぉ!」
「落ち着け! 烏丸!」
 他の教員が、そこら中に伸びている女子や男子に駆け寄った。
「おい、大丈夫か!?」
 教員に起こされた女子や男子は、虚ろな目で教員にせがむ。
「先生……違うんです。全部、私達が悪いんです。烏丸君は……悪くないんです……」
「烏丸君は、悪くありません。僕達が悪いんです……。何もかも」
 俺は一気に脱力した。