「……そう、だよな……大丈夫だよな」
 きっと、大丈夫。
 思い続け強がる事しか出来なかった。

 放課後、俺は部活をサボり、沙耶子と二人で帰り道を共にした。
 いつもの土手道に自転車を停め、二人で芝生に座った。
「ねえ、どうして今日は部活をサボったの?」
 ただ、沙耶子と一緒にいたかったから。
 そんな事を、面と向かって言える筈もなかった。
「さぁな。なんとなく、今日は部活へ行くのが面倒だったんだよ」
 彼女の手が、俺の手の甲に添えられる。
「?」
「正直に話して」
 俺を見る瞳は真っ直ぐで、全てを見透かされている様な気がした。
「……怖かったんだ。このまま、お前が俺の前からいなくなりそうで……」
 俺の声は震えていた。
 なぜ?
 何も分からない。
 ただ言える事は、沙耶子が隣にいるだけで安心する。
「大丈夫だよ。私はどこにも行かないから」
 その言葉だけで、世界が晴れて見えた。
 その言葉を聞けただけで、心が満たされたのだ。


 翌日、学校へ行くと美咲が泣いていた。
 周では彼女の友人達が、優しい言葉を掛けている。
 美咲は、手で顔を覆い、鼻を啜り、まるで周りの言葉を聞いていない様に見える。
 近くに蓮がいたので、事情を聞いてみた。
「美咲、光圀先輩に振られたらしいぜ。受験に集中させて欲しい。美咲といると、疲れるって。そう言われたらしい。まあ、中学生の恋愛なんて、そう長続きする物じゃない。美咲にそう言ったら、物凄い顔で睨まれたよ。今は、そっとしておいた方がいいぜ」
「……そうだな」
 先日の、沙耶子に宛てられたラブレター。
 なんとなく、それに関係していると思った。

 一時限が終わった頃に気付いた。
 沙耶子が学校に来ていない。
 風邪でもひいたのだろうか。
 それなら良いのだけれど。