明らかに、何でもない様には見えない。
「ほら、行こうよ。早くしないとホームルーム始まっちゃうよ」
 何かを隠している。
 彼女の態度を見るだけで、それは明白だった。

 休み時間になると、沙耶子は周りの目を気にする様に俺の元へ来た。
「綾人君。見て欲しい物があるんだけど」
 差し出されたのは、四角い封筒に入った便箋だった。
「読んで良いか?」
「うん」
 読んでみると、その手紙の内容からして、ラブレターだという事が分かる。
 沙耶子は、俺の目から見て、性格は良いし容姿も可愛らしい。
 好意を持つ奴がいてもおかしくはない。
 相手は誰なのだろう。
 そう思い、便箋の一番下の行に目を落とした。
 光圀幸太。
 便箋の一番下には、その名前が書かれていた。
 
沙耶子と話し合った結果、蓮と美咲にこの件は話さない事にした。
 もし、美咲の耳に入ったら、俺達の関係が危うくなってしまうかもしれないから。

 手紙には、昼休みに校舎の裏で会いたいと書かれている。
 昼休みなると沙耶子は、一人で光圀先輩の元へ向かった。
 光圀先輩が、沙耶子に何か変な事をするとは思えない。
 しかし、とてつもなく嫌な予感がする。
 いったい、光圀先輩は何を考えているのだろう。
 美咲という彼女がいるのに、どうして沙耶子を……。

 昼休みの終わるチャイムが鳴る頃、沙耶子は教室に戻って来た。
「どうだった?」
 心配そうに問う俺に、沙耶子は微笑む。
「特に何もなかったよ。私なんかじゃ、光圀先輩みたいな人には吊り合わない。やっぱり、美咲みたいな素敵な人と一緒にいるべきです。そう言って来たの」
 なんとなく安心した。
 沙耶子が俺から離れてしまう。
 そんな気がしていたから。
「そういえば、光圀先輩には美咲がいるのに……どうして沙耶子を?」
「分からない。でも、美咲を大事にしてって言って来たから、大丈夫だよ。きっと」