沙耶子は照れ臭そうに、目を反らして笑う。
「……うん」
「気付いた事があるんだ」
「何?」
「お前、転校して来た時と比べて、笑う様になった」
「……そうかも。最近、毎日が楽しいから」
 俺も同じだ。
 毎日が楽しくてしょうがない。
 前までの俺には、野球しかなかった。
 友達なんて、バッテリーを組んでいる蓮だけで良いと思っていた。
 しかし、それは間違っていたのだ。
 沙耶子、美咲、蓮。
 三人とも、大切な友達だ。
 今がずっと続けば良い。
 二人で夕焼け空を見ながら、俺はそんな事を考えた。
 沙耶子は、この真っ赤な空を見て、いったい何を思っているのだろう。



  ♪



 いつからだろう。
 俺達が笑わなくなったのは……。



 昇降口には、何枚もの枯葉が散っていた。
 もう、秋が来た。
 そんな季節を予感させている。
 野球部の三年生は受験勉強の為に引退し、俺や蓮や他の二年生が部活のトップに着いた。
 引退していった三年生など、俺にとってはどうでも良かった。
 皆は記念に野球ボールを先輩に渡したりしていたけれど、俺はそんな事はしなかった。
 どうせ、会う機会もかなり減るだろうし。

 二年用の靴箱に、沙耶子が茫然と立っていた。
「沙耶子、どうした?」
 沙耶子はビクッと肩をならし、こちらを振り向く。
「な、なんでもないよ」