ほぼ全員が手を上げた。
 俺も周りに会わせて、手を上げる。
「決まりだね。問題は指揮者と伴奏なんだけど……」
 すると、クラス全体がいっそうざわめき始める。
「おい、お前がやれよ」
「指揮者って歌わなくて良いのかな?」
「皆の前は、ちょっと恥ずかしいな」
 全体の反応を見て、委員長は僅かに笑みを浮かべる。
「仕方ないなぁ。じゃあ、私がやってあげても良いけど、皆はどうしたい?」
 ただ、自分がやりたかっただけだろう。
 と、内心で思いつつも、俺自身は指揮者なんて誰でも良かったのだ。

 結局、指揮者は委員長と言う事で話はまとまったが、問題は伴奏者だった。
どうやら、このクラスにはピアノの経験がある奴がいない様だ。
いや、いたとしても、おそらく手を上げないだけなのだろう。
「明日のホームルームで、伴奏者を決めるから。あと、合唱で歌いたい曲も考えておいてね」
 その言葉を最後に、朝のホームルームは終了した。

 一限目の授業は音楽だった。
 皆がせっせと教科書や筆記用具を揃えて音楽室へ移動する中、なぜか宮久保だけは落ち着きがない様に見えた。
 何と言うのだろう。
 何か考え事をしていて、他の事に手が回らない、といった感じだろうか。
 椅子から立ち上がり、歩き出したかと思うと太股を机の角にぶつけてしまい、とても痛そうに涙を浮かべている。
 それを見た彼女の友人が駆け寄って、心配そうに声を掛ける。
 なんだか、遠目に見ていて面白い。

 音楽室でも、宮久保の態度は変わらなかった。
 話し掛けてみても、上の空でまるで人の話を聞こうとしない。
 いったい何を考えているのだろうか。

 放課後、宮久保は俺を音楽室へ呼んだ。
 俺には部活があるだろうから、そんなに時間は取らせないと言っていたが、どんな用があるのだろう。
「どうしたんだよ? こんな所に呼び出して」
 やはり、宮久保の様子は未だに落ち着きがない。
「あの……えっと……聴いて欲しいんだけど……」
「何を?」