俺が仲介に入っても良いのだが、それではどこか後味が悪い。
 こうなれば強引だが、あの策を使うしかない。
「よし!」
 俺は掛け声を上げて立ち上がった。
「な、何?」
「俺は外の皆とサッカーをしてくる!」
「え?」
「だから、お前の相手をしてる暇はない。とりあえず、あの辺の女子に話し掛けてみろ。 もしダメだったら俺は、暫くお前と距離を置く事にする。男子の中の付き合いもあるしな。 じゃあな!」
 それだけ言って、俺は教室を飛び出し校庭へ向かった。

 我乍ら酷い事を言った気がする。
 しかし、こうでもしないと彼女はクラスに溶け込めない。
 この方法が最も最適なのだ。

 校舎に昼休み終了のチャイムが鳴ると、俺は教室へ戻った。
 今、俺の隣の席に宮久保は座っていない。
 辺りを見回してみると、彼女は数人の女子と笑いながら楽しそうに会話をしている。
 あの女子グループは、クラスではあまり目立つような奴はいなかった様に思える。
 それほど性格の悪い奴はいないから、宮久保なら大丈夫だろう。
彼女が、あんな風に友人に囲まれ笑っていられる事に、なぜか自分自身が安心してしまった。
「よかった……」
「ああ、本当によかった」
 俺の隣で、蓮が宮久保を見て笑う。
「お前は何もしてないだろ」
「何もしてなかった訳じゃねぇよ。少しだけ、お前等のやりとりを見てたんだよ。なんとなく分かったよ。お前が誰かに惚れるなんて、ありえないからな。あいつの手助けをしてただけだったんだな」
「俺は手助けなんてしていない。全部、宮久保が自分でやった事だ」
 そう、勇気を出してクラスメイトと接したのは彼女だ。
 宮久保が転校して来てからの二日間、彼女は俺に頼りっきりだった。
 しかし、宮久保は他に頼る相手を見つける事が出来た。
 きっと、もう俺を頼る事もない。
 そんな予感がしていた。