大澄川は県内最大の川だ。雨が振らなく水量が少なくっているが、河口まで10キロ以上あるこの場所でも、河川敷を含めれば、川幅が100メートル近くある。

 防波堤が整備されるまでは、「時々氾濫して街を水没させていた」と、祖父が以前言っていた。


 まあ、どうでも良い。
 既に河川敷は整備され、氾濫しない様にコンクリートで埋め尽くされた。

 あの少女が立っていた土手もコンクリートで固められ、足元はアスファルトで塗り潰されている。

 彫刻家だった祖父もすっかりボケてしまい、県の美術展で大賞を受賞した威厳は既にない。


 橋を渡りきり、最初の小さい交差点を左折すると、正面に母屋と納屋が並んだ民家が見える。

 この、いかにも兼業農家らしい瓦葺の家が、僕の自宅だ。