不思議な光景だった。

 街の中心を流れる大澄川。その土手に、和服姿の少女が佇んでいた。川面を見る訳でもなく、ただジッとして動かなかった。


 橋の上から自転車に跨ったまま眺めていたが、ペダルを踏み込んでその場を去った。

 気にはなったが、妙な事に首を突っ込むとロクなことがない。
 いつだったか、落とし物を届けに行くと泥棒扱いされた。喧嘩の仲裁をすると、二人から罵られた。

 他人に関わらず、見て見ぬ振りを決め込み、自分を守り通す。これが、現代社会を生き抜く為の最良の手段だ。


 それにしても・・・
 僕は額に浮かぶ汗を右手で拭う。

 暑い。
 今年は空梅雨だ。
 梅雨入り宣言はしたものの、一滴も雨が降らない。