「ごめんね」

少女はそう言うと背を向け、軽くステップを踏みながら歩道橋を進む。そして手摺りにもたれて、振り返った。

「世界の誰もが忘れても、お兄さんだけは私を忘れないでしょ」

ニッコリと満面の笑みを浮かべると、両手を広げる。


「ごめんね」


次の瞬間――
少女は歩道橋の上から、煌めくヘッドライトの流れの中へと飛んだ。


音も無く。
色も無く。


呆然と立ち尽くす僕の中に、絶対に消えない笑顔を残して。