必死に言葉を探す。
 陳腐な単語しか浮かばない。
 でも、何か言わなければならない。
 気が動転する。
 悪い予感しかしない。
 焦りが思考を分断し考えがまとまらない。


「2つ上の兄さんと、1つ下の弟がいるの。
 私はいらない。
 親の愛情なんて感じた事がないし、あの人達にとって私なんていてもいなくても同じ。
 友達はいるけど、胸を張って親友なんて呼べる人なんていない。
 きっと、私が死んでも、私がこの世界に存在していた事なんて、みんなすぐに忘れてしまう。

 でもさ、やっぱそれは嫌じゃない?
 私はちっぽけな存在だけど、いてもいなくても同じだけど、ここにいたって事だけは誰かに覚えていて欲しい。

 私を忘れないで欲しい」


 少女は再び満面の笑みを浮かべ、真っ直ぐに僕を見詰める。