まるで、映画のワンシーンの様な光景だった。
制服姿の少女が歩道橋の真ん中で、両手を広げてクルクルと回っていた。


 音が消えた深夜0時。
 残業で遅くなり、弁当が入ったコンビニ袋をぶら下げて通り掛かった歩道橋。僕はそこで、幻の様な女子高生に出会った。


 コマの様に回っていた少女は、音も無く僕の方に向いて止まった。そして、少し陰りがある笑顔を見せた後、その細い指を僕に突き付けた。


「お兄さんに決めた!!」


 長い黒髪を風に靡かせ、意味不明の言葉を僕に投げ付ける。


 誰もいない深夜の歩道橋。
 6車線の道路にまたがる、少し長い歩道橋。
 幅が5メートル程の、少し広い歩道橋。

 そこで、僕は妖精に出会った。