ヤバい。
どうすれば良い?
ただ頭が真っ白で、ハンドルを握る手が小刻みに震える。
何も思い付かない。
道なりにハンドルをきり、とにかく少女から離れる。

ズボンが赤黒く染まっていく。滴り落ちる鮮血。関係無い。もう、そんな事はどうでも良い。


アリバイ。
ふと浮かんだ単語。
そうだ、俺はここに居ない。ここに居るはずがない。

慌てて携帯電話を取り出し、ツイッターにアクセスする。

「俺は街中で遊んでいる最中だ。ああ、ゲーセンにしよう…」

ボタンを押そうとした時、震える手が携帯電話を落とした。


ブレーキペダルの横に転がる携帯電話を見付け、頭をさげて手を伸ばす。

その瞬間、目の前が真っ暗になり、身体が前方に投げ出されて背中がクラクションを鳴らした。


土砂降りの雨の様に頭上から降り注いだフロント硝子は、運転席を一瞬に埋め尽くしていた。

何が起きたのか。
車は停止している。
全身が重たくて、どこも動かない。動かせない。

薄れゆく。
朦朧とする意識で、現状を漠然と把握する。


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