激痛。
コンクリートの床が、自分を中心に赤黒く染まる。


「戻ってくるなんて、あんた本物のバカだね」

乾いた声がする方向を見ると、少女が冷笑を浮かべていた。
その口角には、赤い物体。

それが自分の小指だと気付くまでに、1秒も必要ではなかった。

俺は瞬時に後方に足を引いた。怒鳴る事も、まして殴りつける事など出来ず、ただ後退さった。


理由を正そうとは思わなかった。いや、多分俺は知っている。


「アタシどころじゃない。あんたは本当に壊れてたんだ」

無かった事にしようとした現実が、真っ白な霧の中から現れてくる。

「最初はアタシを笑いに来たのかと思ったけど、都合が良い様に、本気で記憶を飛ばしてたんだ。

ここに来なければ、完全犯罪だったかも知れないのにね」