周囲を見回すと、屋根まで伸びるシャッターの横に、端が錆びた鉄板の扉が見付かった。

その扉まで近付くと腐臭は更に強くなり、鼻の奥がジリジリと痺れてきた。


「こりゃあ、マジで死体でもあるんじゃないのか」

取っ手に手を掛け、全体重をかけて後ろに引っ張る。

こんな平和な街で、殺人事件など起きる筈がない。そんな事はテレビの中、別世界のドラマみたいなものだ。

それでも、退屈な日常に、スパイシーなアクセントを求めてしまう。


ギシギシと軋んだ後、取り付け部分から赤茶けた錆がパラパラと落ちた。

50センチ程の隙間が明き、人が通れそうな雰囲気になった。


俺は横向きなると、その扉から建物の中へと侵入した。