微かな腐臭に惹き付けられ、俺は金網を乗り越えて廃墟になっている工場に足を踏み入れた。

猫の死体の様な…
いや、それなら遠くまで臭う事はない。これはもっと大きな何かだ。


街外れの、とは言っても、目の前には住宅が建ち並ぶ国道沿い。

喉が渇いて、偶然停まった自動販売機。落とした100円玉を拾おうと身を屈めた時、漂ってきた腐臭。

その方向を見ると、金網と、その向こうに廃墟になったスレート葺きの建物。

何かを作っていた工場の様に見えるが、錆びた扉から推測すると、随分前に閉鎖されたものと思われる。


左右に並ぶ工場。学校にある一般的な体育館の、約半分位の大きさだろうか。

鼻に意識を集中させる。
どうやら、左側の建物から臭いが漏れている様だ。