店内


「翡翠、じっと見ててもすぐにはできないぞ?」

幸大が充電する機械を眺め続ける翡翠に言う。

「…わかってはいるんだがな。」


「最初に携帯を持った時は私も充電が終わるのが待ち遠しかったですの。」

可鈴が言う。

「そう言えば、ライブはどうだった?」

「私、途中で具合が悪くなっちゃって。」

圭が言う。

「たまに雰囲気とかで気持ち悪くなる人がいますから。

私も圭さんに付き添って一緒に外に。」

奈々が言う。

「圭は災難だったな。

可鈴は?」

「私は、圭が倒れたのも気づかなくて…」

「あの音量なら聞こえなくても仕方ないわよ。」

圭が言う。

「ごめんなさいですの。」

「で、良い曲なのか?」

「曲自体は普通でしたの。

あまり売れそうには思えなかったんですの。

でも、こう、ビリビリと気持ちいい何かが…」


「それがロックですよ!!」

奈々が言う。

「奈々、店内では静かにしろ。」

「普通なのに、また行きたいですの。」

「そうか。

ま、良いんじゃね?」

「行って良いんですの?」

「イチイチ俺の許可は要らんだろ?」

「…そう、ですの。

また行きますの。」

可鈴が少し落ち込んだ。