あくる朝。
窓を開けると銀世界が広がっていました。
日曜の朝、町もなんだか必要以上にシーンとして、いつもの平凡な休日に拍車をかけているようでした。
どん!どん!
玄関の方で静寂を壊すように扉を打つ音がしたので僕は玄関を開けてみました。
「どちらさまで…」
ぱし!
きゃはは。
いきなり雪玉を面に食らわされたのです。
「竜一!起きろー!みんなで雪合戦やるよー!」
雛の投球はストライクだったから僕は頭に来ましたが、雛のその向こうに見えたふんわりした装いの雪の妖精に一発で心が和んでしまったのも事実です。
「竜ちゃ~ん!早く支度しておいで~!」
僕は弥生という妖精を見た、その瞬間閃きました。

彼女にノートをいつか渡そうと。
・・・いつか・・・
いつ?

僕を訪れたのは、
弥生と雛でした。
二人は雪まみれになって、
昔からの親友みたいに
ふざけ合って楽しんでました。女って、すごいです。
「弥生~そこで口開けてて~」
少し離れた場所から
雛が投球ポーズをしました。
「こう~?」
言われるがまま、弥生はぽかんと口を開けて突っ立っています。
ぱしっ。
「すとら~いく!」
雛がガッツポーズを決めると、
弥生は雪だんごをぺっぺっと吐き出して笑っていました。
「雛ちゃ~ん、冷たいな~!」
僕は二人のそのやりとりを見て、
清々しい気持ちになりました。
よぉし。
僕は足元の雪をこっそり集めて、どちらかに投げてやろうと企てました。
その瞬間。
ぱしっ。
「痛ってぇ~!」
僕の後頭部の後ろの方で
薫がガッツポーズを決めていたのです。
「…なんだ。お前も居たのかよ。」
薫が近寄りながら
僕にこう言いました。
「…お前、雛ちゃんに答えたのかよ。」
「答えるって何を?」
「…本当に、にぶいんだな。・・・雛、お前に惚れてるぞ。」
・・・わかってるよ、と僕は心の中で呟きました。
僕が何も言わないでいると、薫は続けたのです。
「弥生はオレが幸せにするからさ」
…。
…弥生はおれが?…
「昨日、プロポーズした。オッケイ出たよ」
僕はしばらく遠めに、ふわふわ舞う天使の様な
弥生を見てました。

その日の夜遅く、僕は当然ノートを開きました。