『突然だが、驚かないで聞いて欲しい。…』

コバセンが重い口を開いた。

『実は、藤城は喋ることが出来ない。聞くことは出来るが、言葉を発せない。幼い頃、ある出来事のショックで話すことが出来なくなった。』


教室に沈黙が走る。

藤城は、俯いたままピクリとも動かない。


『藤城、困ったことがあったらみんなを頼って良いからな。みんなお前の味方だからな。』

藤城はまた笑顔で頷く。


『これで、ホームルーム終わりま~す。』


朝礼が終わると、一人の女子が藤城のもとへ近付いてきた。

見てみると、ユイだった。

『ねぇ、麗ちゃん。私の名前は霧島 結衣<キリシマ ユイ>よろしく。』


藤城は笑顔でお辞儀する。

『麗ちゃんって、手話できるの?』

藤城は頷く。

『そうなんだ!実は、私もちょっとできるんだ。』


すると、二人は手話で会話をし始めた。

楽しそうに。

オレはそれをじっと見ていた。

と、言うより藤城を見ていた。