だからキスして。

しばらく黙って、やがて先生は口を開いた。

「キス一回につき一万だっけ?」

「そ、そう…」

あたしはドキッとした。
そして嫌な気分になった。

先生があたしを捜してくれてたワケじゃなくて、本当にキスの依頼だった…かもしれないって思った。

忘れられないキスを体験したいのかと想像して苦しくなる。

あたし以外を真剣に愛したって、そんな想いを気持ちを
それをあたしに言うの?

…嫌よ…ムリ。

それに

先生があたしとキスをする───…

あたしが先生とキスをする…

でも、そこにあたしの感情は乗せてはいけないの。

どうしよう。そんなのできるワケない!

キスしたら…キスしたら…絶対に想いは甦る。また好きだと、気づいてしまう…

こんなに頑張って忘れてきたのに

そんな残酷な依頼。先生…本気?



先生は、あたしが見た事もないような真剣な顔で静かに言った。

「…じゃあキスしよう」

「イヤ!!そんなのムリ!!」

あたしは即答した。
仕事を断る事はしないって決めてたのに…
悔しいけどムリ!!

でも先生は引き下がらなかった。

「お金なら払うよ」

「嫌なの!」

「お前との『キス』を100万回買うよ」