片づけをして、コーヒーを飲みながら、少しのんびりとすごした。
何をするわけでもなかったが、その時間はとても、楽しかった。


楽しい時間が過ぎるのはあっという間で、気づけば家を出る時間になっていた。

「泉君、そろそろ私、出んとあかん」

時計は8時をまわっていた。会社までは歩いて約30分。ゆっくり行っても、間に合う時間ではあった。

「もうでんの?そうか・・・」

少し残念そうに、出る支度をした。泉の準備も終わり、一緒に家を出る。

「・・・あのさ、会社まで、一緒に送ってっていい?」

「え??」

「俺、仕事は昼からやし、まだもうちょっと一緒にいたい」

少し寂しそうな顔で奈緒を見る。

・・・その顔はずるいわ。断られへんやん。

「いいよ。でも、泉君、有名人なんやから、手前までやで?」

「ほんまに!やた!」

エレベーターを降りて、一緒に会社の方へと向かった。泉が手をつないでくる。少し照れくさかったが、つないでいる、泉の手が暖かくて、なんだか安心した。

「次はいつ会えるかなぁ」

「それは泉君の仕事次第ちゃう??」

当然、私にも残業はあっても、基本的には土日はお休みで、就業時間も決まっている。変則的な時間で仕事をするのは泉の方なのだから、当然、予定もそちらにあわせるようになる。

「そうやんなぁ・・・」

泉が考え込んでいる。そんなに考え込むものだろうかと、思っていると、泉が少し、難しそうな顔で聞いてきた。

「あのさ、どのくらいのペースで会いたい?」

「へ?」

「いや、たとえば、やで?平日とかでも、時間が会えばつねに会いたい?それとも、土日とか、奈緒がお休みで、俺も時間が会えば会うとかがいい?」

「えっと・・・どっちかに決めたほうがいい感じ?」

「・・・俺としてはできれば、会えるときに会いたい。でも、それってうざいかなぁ~??とか思ったんよね。どう思う?」

「じゃあ、無理がない程度で、会えるときに会うっていうんは?」

常にあわないといけないと思ったり、そのせいでしんどくなるのは嫌だった。しんどいとか、思うとは思えんなかったけど。でも、好きな人に会うのが、しんどいとは思いたくない。