「なんか、おいしそうな匂いがする」

肩に顔をうずめたまま言ってきた。

「ご飯。できたし、食べよ?」

泉を抱き起こした。
布団を片付け、テーブルを出す。泉が顔を洗っている間に、朝食をテーブルに並べた。

『いただきます』

泉が味噌汁を一口食べた。少し緊張する。誰かにご飯を作るのなんて久しぶりだったから。

「・・・・どう?」

恐る恐る聞いてみた。
泉はにっこり笑っておいしい、と言ってくれた。

「よかった・・・!」

安堵した。

「いつも朝は和食?」

泉に聞かれて頭を横に振った。

「ううん、一人やったらコーンフレークぐらいですますかな。楽やし」

「え!?それやったら別に、コーンフレークでよかったのに。なんか、わざわざ作ってもらってごめん!」

口では申し訳なさそうに謝っているが、泉の顔は笑っていた。

「・・・なんか、顔は笑ってますけど」

突っ込んでみると、泉はえ?と苦笑いした。

「うーん・・・悪いなぁと思ってんのはほんまやで?ただ、俺のために作ってくれたってのが、それ以上に嬉しいんよな~」

ニコニコと笑う泉。少し照れてしまう。

「よ、喜んでいただけて、なにより。です」

漬物をぽりぽりと食べた。
泉は残さず、すべておいしそうに平らげてくれた。