***** 奈緒's View *****

久しぶりに、お母さんの夢を見た。手を繋いで、河原を歩いていた。しろつめくさを摘んで、花輪を作ったりしていた。楽しい、夢、だった。


起きると、私を抱きしめたまま、すーっと寝息をたてて寝ている、泉の姿があった。手を伸ばして、携帯を見ると、まだ、6時半だった。
いつもは7時半に起きて準備をして、コーンフレークを食べて家を出る。けど、さすがに、泉もいるので、せめて、パンを焼いたりくらいはしようかと、早いが起きることにした。

そっと、泉の手をよける。

「う…ん、……奈緒…」

名前を呼ばれて、起こしたかと、びっくりする。

「…泉君?」

呼んでみたが、返事はなく、気持ちよさそうな、寝息だけが聞こえてきた。

「寝言か」

小さく笑うと、お風呂と一緒になっている、洗面所で顔を洗った。

冷蔵庫の中を見たが、残念なことに、なんにもなかった。あるのは、卵と漬物、あとは味噌くらいだった。

「…作るとしたら和食かぃ…」

米をといで炊飯器にしかける。
少し時間があるので、簡単に化粧をしてしまう。パジャマから、スーツに着替えた。

乾燥ワカメがあったので、お味噌汁をつくる。時間7時過ぎ。今日は、余裕をもって、8時くらいに出るか、と、気持ちよさそうに寝る、泉を起こした。

「泉君、おはよ」

「う…ん……」

「起きて」

軽く体を揺すると、泉の目が薄くあいた。

「…おはよう」

にっこり笑って声をかけると、泉も笑った。

「奈緒」

「ん?」

「こっち」

泉が腕を引っ張ってくる。一緒に寝たいのはやまやまなんやけど…

「ほら、起きて」

「むー…」

目をこすりながら体を起こして抱きついてきた。