携帯を取り出して、メールや着信を確認してみたが、やはり何も入っていなかった。
今いる場所から、泉の家までは大体、5分くらい。少し悩んで、よし!と決心する。

もう一回、電話してみて、出なかったらもう帰ろう。


ぷるるるる、ぷるるるるる。


数回のコール音の後、また、留守電のメッセージになった。
やっぱり、今日は帰れってことよね。

はぁ、とため息をついて、電話を切ろうとした。

『も、もしもし!?』

泉の声が聞こえてきた。

「え?泉君?」

泉にかけたのだから、本人がでておかしくはないが、つい、疑問系になってしまった。

『奈緒!?今どこ!?』

「ええと、明日香を駅に送ったところ。泉君ちから5分くらいのとこかな」

『えと・・・この後の予定は?』

「ううん、なんにも。泉君に連絡つかんかったら、帰ろうと思っとった」

『あかん!あ、いや、ちょっとだけでも会えんかな』

「うん。…会いたい」

『そしたら、うちのマンションにきて。多分、俺もすぐに着くし』

「うん、じゃ。後で」

『うん』

ぷちっと電話が切れた。
今日はもう、一緒にいられない。そう思っていたから、少し嬉しかった。
軽い足取りで、泉のマンションへと向かった。