「連絡、してみるべきかな」

明日香に聞くと、もちろん!と言われた。
少しためらいながらも、携帯を取り出して電話をかけてみた。

「出てくれるかな・・・」

数回のコールの後、留守電になった。

「あ、あの・・・っ」

メッセージを残そうと思ったが、なんと残せばいいかわからず、そのまま電話を切ってしまった。

「あれ?電話、でんかったん?」

明日香に聞かれて、少し悲しそうな顔をしながら頷いた。

そうこうしているうちに、駅に着く。

「あれ…堺君じゃない?」

ちょうど、改札口手前くらいのところに、堺の姿を発見した。明日香のことでも、待っているのだろうか?

「明日香、堺君、待ってるみたいやで」

つんつん、とひじでつつくと、明日香が首をかしげた。

「今日はうちにお泊りの予定やないんやけど・・・」

えぇ!?とびっくりして、思わず声をあげてしまった。
その声に、周りの人が、こっちを見る。

「あ、あはは。何でもないです」

苦笑いしていると、堺がこっちに気づいたのか、駆け寄ってきた。

「明日香!」

やはり、堺の待ち人は、明日香のようだった。

「香月、どうしたん?」

きょとんとした顔をしている明日香に、少しすねたような顔をする堺。

「今日の飲み会の時とかも、なんか高瀬さんと親しそうにしてたし。その、気になって。どうしても、明日香と一緒に今日はおりたい。あかんかな?」

恐る恐る明日香を見ると、明日香は、はぁ、と息をついて、帰ろっか。と堺の腕に抱きついた。

「じゃね、奈緒。もう一回さ、要君に連絡してみな?」

「うーん、考えとく。じゃね」

手を振って、明日香を見送った。