***** 奈緒's View *****

ピースの控え室を出て、客席へと向かった。
しかし、正直なところ、どこをどう行けば、客席にたどり着くのかがわからなかった。

ローカで身動きできずにとまっていると、スタッフらしき人が通りがかった。

「あ、あの!すみません!ここから客席には、どう行けばいいんでしょう?」

恐る恐る聞いてみた。

「あ、もしかして!君が噂の奈緒ちゃん!?」

一瞬、思考回路が吹っ飛んだ。

「いえ、噂になるほどの者ではないので、違うんじゃないかな~なんて思うんですけど」

苦笑いしながら答えると、スタッフは、笑いながら、聞いてた容姿そのものやし、君の事やわ!と大笑いしていた。

・・・なんで?別にそんな、私はここで有名になるようなことは・・・・
あぁ・・・・・・あれだ。高松のせいだ・・・(すでに呼び捨て)

苦虫を噛み潰したような顔をしていると、スタッフはそうそう、と客席までの道を教えてくれた。

「ありがとうございます。助かりました!」

さっきまでの渋い顔とは正反対の、満面の笑みでお礼を言った。

「いえいえ、どういたしまして。十分に堪能してってくれよ!」

そういうと、スタッフは奥へと進んでいった。
言われた方へ進んでいくと、後ろから誰かの走ってくる足音が聞こえた。

ローカは走ると危ないぞー?

そう思って、少し横によけようとしたときだった。

「・・・・・・・・・!!奈緒!!」

聞き覚えのある、一番聞きたかった声が聞こえた。
振り返ると、すぐそばに、泉がいた。

「きゃぅ!」

タックルに近いものをくらった。軽くめまいがした。
泉はぎゅっと強く、強く。抱きしめてきた。

「いず・・・み・・・く・・・・・・」