堺に、部屋の外に連れ出された。

「おい、高松さんとおるのって、やっぱり奈緒ちゃんじゃねーか?」

不安でたまらなくなる。
多分、この不安は、的中してると思う。

「多分。そうやと思う」

「お前、こんなとこでおってええんか?」

両肩を持ってゆさゆさと体を振られた。

「俺だって、すぐに確かめてーよ!・・・けど!」

奈緒の気持ちがもう、俺から離れてたら。
嫌いだといわれたら?
・・・それどころか、口すらきいてもらえなかったら?

どんどんどんどん、悪いほうへとばかり思考が進んでいく。

とめられない。

どうしても、奈緒の気持ちを確かめるのが怖い。


ふと、ローカのちょうど角のところで、大道具さんと話している女の子の姿を見かけた。
茶色がかったショートの、俺の腕にすっぽりと納まるくらいの小さな体の女の子だ。



奈緒だ。



「おい、要。かなめ!」

堺に背中を思い切りたたかれた。

「って!なにすんだよ、香月」

キッとにらまれ、一瞬ひるむ。

「お前、今聞きに行かんかったら、ぜってー後悔すんぞ!」

迷ったが、それでも、朝からずっとすれ違ってきた奈緒が、今すぐそばにいる。今なら、走れば手の届くところに。

「行けって!」

堺に怒鳴られ、泉は奈緒のいる方へと走っていった。