「要、大丈夫か?」

聞かれて、あぁ、とだけ答えた。
もう、言葉を出す元気もない。

「舞台、大丈夫か?後15分で本番だぞ」

しっかりしないとだめだ。と、自分に言い聞かせたばかりだったのに。
・・・こんなに俺って、弱かったか?

自問自答して、そして憂鬱になっていく。

コンコン

「入りますね」

扉が開いて、ピースのマネージャーが入ってきた。

「あ、岸田さん!チケット用意できました?」

鬼無が聞くと、岸田はほっとした顔で大きくうなづいた。

「後ろの方の席なんだけどね、何とか1枚用意できたよー!」

よかったじゃないっすか!と、大部屋のみんなもはしゃいでいた。

「そうそう、さっき、高松さんが到着して、うわさの奈緒ちゃんも、来てたよ!」

『控え室にすか!?』

部屋内の人たちの声がハモった。

「すっごいいい子だったよー。後ろのほうのチケットしか取れなかったのに、わざわざ用意してもらってすいません、だって。たまーに、用意して当たり前って感じで、文句言う子、いたりするけど、あの子はそんなことなくって。いや~、高松さんにしては珍しいタイプだとは思ったけどね」

ははは、と笑いながらしゃべっていた。

「どんな感じの子だったんですか」

岸田に聞くと、うーん、と思い出すように教えてくれた。

「身長は、このくらい。158センチかな?160はなさそうだったけど。少し茶色かかった髪でショートヘアだったな。小柄で、いい子~って感じかな?」

最後のほうが若干抽象的な感じになってはいたが、見た目は奈緒そのもののようだ。