高瀬に言われて、嫌な胸騒ぎがした。
けど、奈緒は、確かにいい子で、いろんな人に好かれる子だと思う。
(むしろ、彼氏いないのが不思議なくらいだって)
当然、そんな子だったら、高松が気に入ってもおかしくはないと思う。
でも、高松と、奈緒が一緒にいたとしても。
きっと、奈緒は、高松とは何もない。



そう、信じてる。
それに、
そう、信じたい。




「いえ、相手の子が誰かも分からないですし、いるかどうかもわかんないじゃないですか」

苦笑いを浮かべて、何とかその場をごまかした。

「高松さんには、特に急ぎの用事って分けじゃなかったんで、また後で伺います」

そういって、ぺこっとお辞儀をして、部屋を出た。

「失礼、しました」

暫く、控え室前のローカで、必死で嫌な考えを振り切ろうとした。
これから、舞台もあるのに、こんな状態じゃ、奈緒にしかられる。
そう思って、両頬を自分でばし!と叩いて、気合をいれ、大部屋へ戻った。

コンコン

「入ります」

部屋に入ると、部屋の中がかなりざわざわしていた。

「なんかあった?」

複雑そうな顔をした堺に話しかける。

「あ、要。お帰り。高松さん、いた?」

聞かれて泉は首を横に振った。

「そう、だよな」

堺の表情が気になる。

「なぁ、香月。何があったんや?」

香月に聞いても、あぁ、としか答えてくれなかった。

「あ、泉さん!聞きました!?」

横から、鬼無が声をかけてきた。