「マネージャーさん、出て行きましたけど・・・」

泉が高瀬に聞くと、高瀬は「珍しい」、とぼそっと呟いた。

「そういや、泉は高松になんか用やった?」

え?と、あわてる。

「いや、用ってほどのものでもないんですけど・・・」

歯切れ悪く答えるしかなかった。

「そうか?」

(・・・大体、今まで、高松がらみって言うたら、女関係やったけど。泉に彼女おったなんて話聞いたことないしな。第一、あいつも、特定の彼女とかおったことないやろ)

ふーん、と、それならいいけど、と言うと、高瀬は続けた。

「多分、高松は今からこっちくるわ」

泉の表情が、少し強張った。

「そう、ですか」

「誰か、一緒におると思うで。しかも、高松は結構気に入ってるんちゃうか?」

泉の表情が、さらに硬くなる。

「なんでですか?」

うーん、と高瀬は少し間をおいて話し出した。

「基本的に、まず、仕事に行くんを渋るほどの相手がそうそうおらんのに、その上、電話してる最中にあいつが仕事を取ったのは、相手が仕事してるところを見たいっていうたか、行けっていうたかのどっちかや」

昨日の、自分と奈緒のやり取りを思い出した。

「で、しかも今、マネージャーがチケットを取りにいってる。枚数1枚や。てことは、相手と2人っきりでおる可能性が高い。その上、自分がこれから出る舞台のチケットを、わざわざ当日、しかもこんなぎりぎりの時間で用意させるとか、滅多にないことやからな」

奈緒と高松がに、一体どんなつながりがあるのか、気になった。

「以上で、これからもし、今日一緒にあいつと来る子がおったら、そうとう、お気に入りやと思うで」

にやっと笑って泉の方を向く。

「泉の用があるんは、その相手の方ちゃうんか?」