「あー、笑った。ごめんなさい」

人の顔を診て笑うのは失礼だということくらいは、認識していた。
なので、ごめんなさい、と、素直に謝った。

「いや、言うたやろ?俺は、奈緒ちゃんが笑ってくれたらそれでええって」

にこにこ笑って、奈緒を見ている。

「奈緒ちゃん、凄いな」

高瀬も同じようにニコニコ笑いながら奈緒の方を見てくる。

「へ?何がですか」

言っている意味がよくわらかないという顔をする。

「高松がこんなにいい顔するの、初めて見たよ」

「よくわかんないですけど・・・」

あはは、と笑いながら、高瀬が奈緒の頭をぽんぽん、と撫でた。


・・・なんか最近、いろんな人に頭をぽんぽんされてないか?
そんなに叩きやすいんやろうか・・・


「そんな変な顔しないで」

高瀬に言われて、ますますよく分からない顔になった。

「とりあえず、そろそろ始まるし、見に行っておいで」

高松に言われてそうします、とドアに手をかける。

「あ、あの」

部屋を出る前に、高松の方を向いて、少しもじもじしながら小さい声で言った。

「ありがとうございました。本当に」

照れた表情で、少し頬を赤くしながら、笑って言った。

そのまま部屋を出て、劇場へと向かった。


「いいこだな、あの子」

高瀬が言った。

「だろ?手、出すなよ?俺がねらってんねやから」

高松が返す。

「それは約束できんな」

「・・・あんな子を泣かすとか、ほんまに許せんな」

笑いながら、舞台頑張るか!と2人で手をパンっとあわせた。