10分後、堺と明日香が到着した。

「いた!おい、要!」

明日香と堺が泉に駆け寄る。

「大丈夫?要君」

明日香が声をかけると、小さく、あぁ、とだけ答えた。

「何度電話しても電話が通じねーんだ。どうしたらいいんだ」

落ち込む泉に、明日香が聞いた。

「ね、要君。なにがあったん?」

泉は少しの沈黙の後、今までの成り行きを説明した。

「・・・タイミングわっる・・・」

同情してしまうくらいにタイミングが悪いと思った。

「でも、なんで高松さんがおってんやろ。その人の見間違いやないんか?」

はぁ、とため息をつく泉。

「わかんねー。でも、あんだけはっきり言うてたし、多分、本人で間違いないと思うわ」

高松の女癖の悪さは、事務所内に限らず、業界中でも有名だ。世間一般の人たちにもそうやって言われている。もちろん、それでも、高松と一緒に居たいといって、言い寄ってくる女は大勢いた。

事務所の中でも、何人か、高松に彼女をとられたやつもいる。もちろん、高松自身は遊びのつもりでだ。しかし、とられたほうはたまったもんじゃない。

だから、高松にだけは、彼女の存在を知られたくなかったんだ。

「なんで、高松さんなんだよ・・・」

はぁ、と、深いため息をまたついた。

とりあえず、とパークスの周りや、泉の家の周り。あちこち歩き回って探した。30分おきに、携帯にかけてみるが、つながらない。

「だめだ、やっぱりいねー」

祈るように携帯を握り締める。

「ね、香月。時間・・・」

明日香が携帯の時計の画面を見せてきた。時間は12時を回っていた。

「1時から仕事なんやろ?もういかんと・・・」

明日香に言われて、泉は首を横に振った。

「あかん、奈緒がどこにおるか分からんのに、こんな状態で仕事やむりや」

落ち込む泉の頭をばしん!と明日香が叩いた。