あわててベッドから体を起こす奈緒。ぺこっと頭を下げた。

「今、いいか」

聞かれて高松は頷いた。奈緒は、高松の顔を見て、少し気まずそうにする。

「名前は?」

「え?あ、奈緒です。伏見、奈緒」

名前を言うと、そうか、と懐かしそうな目で、まつたかは、奈緒の顔を見てきた。

「・・・年は、25くらいか?」

聞かれて頷いた。

「奈美の、そのくらいの歳の頃にそっくりや」

言われて、高松と顔を見合わせた。

「・・・まさか、息子も同じ人のことを好きになるとは思わんかった。正直、出版社の知人から、写真を見せられたときにはびっくりした。奈美にそっくりな子が写っとったからな」

はぁ、とため息をつく。

「奈美とは1年間、付き合うとった。ちょうど、俺がまた、大阪での仕事が増えてきたときのことや。しょっちゅう大阪に仕事できててな。そのときに知り合った。奈美は、芸能界に疎くて、俺のことをまったく知らんかった。東京にいる、お前の母さんとの仲もうまくいってなくて、離婚まで秒読みってときやった。やから、俺は、奈美に交際を申し込んだ。もちろん、奈美も受けてくれた。それからしばらくして、大阪での仕事もひと段落ついて、東京での仕事がほとんどになった頃、正直にすべてを打ち明けた。そして、妻と離婚するから、一緒に東京に来てほしい、結婚してほしいとお願いした。けど、奈美は、それは受けてくれなかった。何度もお願いしたが、奈美は一度も首を立てにはふってくれんかった。そして、そのまま、奈美とはそれっきりになった」