高松が隣にぺそっと寝そべってきた。

「でも、親父は奈緒のお母さんの知り合いやったんやろうか」

うーん、と頭をひねった。
そのとき、夢の中で、母さんが言った一言を思い出した。


『そうね、奈緒が有名人になったら、お父さんに会えるかもしれないわね』


「私が有名人になったら、お父さんに会えるかもしれない」

そう、つぶやくと、高松は、え?と聞いてきた。

「違う、その前や。お父さんは有名人から。我慢しなさい、って言うたんや」

高松は体を起こして、私の顔を覗き込んできた。

「私には、生まれたときからお父さんがおらんかった。お母さんに聞いても、お父さんのことは、何にも教えてくれんかった」

思い出すように、母さんの言葉を頭の中で反芻した。

「前に一度だけ、お父さんのことを教えてくれたことがあって、最近、その夢をよく見てたの。そのときに、お母さんは、お父さんは有名人やって言うてた」

「―――――まさか――――・・・・」

「まさか、ね」

そう言って、顔を見合わせた。



コンコン


ドアをノックする音がした。

「はい?」

「・・・ゆうきか、入ってもいいか?」

「どうぞ」

まつたかが、中に入ってきた。