「奈緒は、お父さんに会えないん?」

「・・・奈緒。お父さんはゆ・・いじ・・から。我慢しなさい・・・・・・」

「じゃぁ、奈緒がゆうめ・・になったら、お父さんに・・・かな」

お母さんが笑いながら、頭を撫でてくれた。

「そうね、奈緒が有名人になったら、お父さんに会えるかもしれないわね」

「ほんとに?」

「きっと。でも約束して?お父さんに会っても・・・・絶対に・・・・・・・」



「・・・ぉ・・・・・・・なお・・・・奈緒」

「え?」

気づくと隣で、心配そうな顔で覗き込んでいる泉の顔があった。

「どうした?奈緒、なんか泣いとったから」

言われて、気づいた。そっと、涙が流れていた。

「あれ?なんで」

そっと涙をぬぐった。

「なんか、つらい夢でも見た?」

言われて、ふっと思い出す。

「ううん、こないだの、夢・・・・お母さんが、お父さんは・・・・有名人だって、言う・・てた」

夢の中の母親は、有名人だと、言っていた。

「有名人?」

泉に聞かれてうなづいた。

「その後、お母さんと何か、約束したんやけど・・・・」

「約束?」

「うん。でも、どんな約束やったかが思い出せんのよね・・・」

うーん、とうなると、泉は、そっと頭を撫でてくれた。