「もー、なんで正直にそうですって答えるんよ」

ぷりぷりと怒ると、どうして怒ってるのか、と、泉は聞いてきた。

「ただでさえ、高松さんの件で、いろいろとあったのに、ここにきて、付き合ってるのが、また、有名人ってばれたら・・・・・・もー!」

誰が悪いわけでもないが、なんとなく、泉に八つ当たりをする。
あの後、泉は同僚や、営業さんに写メを求められ、一緒に映っていた。どうしようもない。もう、ばれてしまった。月曜には、全員に知れ渡っているだろう。
深い深い、ため息が出た。

「・・・ごめん、奈緒」

しゅん・・・とする泉。泉が悪いわけじゃないのに、八つ当たりしすぎたか、と、ううん、と私もごめんね、と謝った。

「よし、気分転換に、ご飯でもいこう!」

そう言って、手をつないで街中を歩く。大通りは少し危ないので、何本か、中に入った通りを歩いて、お店を探す。

「あ、ここはどう?」

小さな家庭料理のお店のようで、大通りからは離れているため、お客の入りは少ないようだった。

「ええかもね、ここにしようか」

中に入ると、他に1組の老夫婦がいるくらいで、他にはお客はいなかった。

「いらっしゃいませ」

感じのよい、女性が声をかけてきた。適当に、店の中の席に座る。店はカウンターのみで、席数も、後ほんの数席あいているくらいだった。

「とりあえず、ビール」

「はい、おおきに」

女将さんは、すぐに瓶ビールを1本と、コップを2つ用意してくれた。