『もしもし、奈緒?仕事、終わった?』

泉に聞かれて、今、終わったところ、と答えると、ちょうどよかった。と返事が返ってきた。

『今、ちょうど、奈緒の会社まで迎えに来てるとこ』

「会社!?」

『え?そう。下の、入り口の自動ドアの前』

「うそ!?」

『え?なんかまずかった??』

聞かれて、はっと背後に気配があるのを感じた。振り返ると、みんなが集まっている。

「ち、ちれー!・・・あ、ごめん!こっちの話。もう、下におるん?」

『いるよー。すぐに降りてこれる?』

笑いながら答える泉。

「わかった、すぐに降りる」

そういて、電話を切ると、隣で目を輝かせながら、同僚が聞いてきた。

「なになに、もしかして、彼氏、下におんの?」

「い、いません・・・」

目をそらして、荷物をまとめる。

「そ、それじゃ、私はこれで。お疲れ様です!」

急いで部屋を出て、エレベーターを待っていると、事情を知っている、同僚2人が走ってやってきた。

「お疲れ、伏見さん。ぐうぜーん、私も今から、帰るとこ」

「私も、私も」

「あ、あはは・・・お疲れ様です」

仕方ない、2人くらいは観念するか。遠目にだったら、顔は暗くてよく見えないかもしれないし。

そう思って、エレベーターに乗って、下まで降りた。