「岸田さん、ちょっといい?」

話しかけると、驚いたような表情で、目を見開いてくる。

「な、なんですか高松さん!?改まって」

「いや、親父が今夜、話があると。それで、今日は家に帰らないといけないんで」

なんだ、と、ほっと胸をなでおろした。

「また、何かあったのかと思いましたよ」

「何かって?」

「え?また、何か、奈緒ちゃんにあったのかと思ったんですよ」

「奈緒ちゃん?なんで」

不思議そうな顔をする岸田。

「なんでって・・・難しそうな顔して、高松さんが話しかけてくるとか。奈緒ちゃんのことくらいしか思い浮かばないじゃないですか」

「なんで」

「なんでって・・・気づいてないんですか?」

「なにが」

「・・・高松さん、奈緒ちゃんのことは、本気じゃないですか」

「―――――あぁ」

「回りも気づくぐらいですよ。高松さんが変わったなって思うくらいに、ですよ」

「・・・まさか」

「まぁ、いい変化だと思いますから、いいんですけどね。とにかく、今夜は実家のほうでいいんですか?」

「お願いします」

「了解です」

岸田は終始笑顔だった。